今年もSDL2017@smtが始まった。運営を支えている教員の皆様、本当にご苦労様です。今年は3年ぶりに午前中から観戦できたので、ファイナリスト決定前に(駆け足ではあったが)全作品を観ることができた。全国から集まったケンチク学生たちの熱気に揉まれながら、若いエネルギーを吸収する。今年は あと何回 観に行けるか分からないけど、以下、会期中に随時、修正・追記していきます。
=3月5日の感想(作品展示)===========================
今年は午後から予定があったので、午前中の2時間弱で6F→5Fの順に駆け足で観戦。
以下、気になった作品。
018「都市の汀」新しい湾岸のあり方。
058「記憶の象形、都市化する境界」岩手県宮古市田老地区における防潮堤を積極的活用した作品。好感。
328「禅語の建築化」大阪船場の細い路地に、禅語を建築化した空間を点在させた作品。
130「がんばらない」『へた地』を分類して再定義し、分散型都市公園を提案している。この手の分類系の作品は、自分の好み。
132「学校畔道」学校の登下校が楽しくなりそうな作品。
342「廃墟と化し、都市と化す」つくばセンタービルを題材とした作品。個人的には、現在のココの広場の雰囲気は好きだけど。
387「憧憬の山麓」三重県南部の山村を観光地として活かそうとする作品。斜面のランドスケープと一体化した建築物。バス停から、観光案内所や直売所, 食事処, 足湯, 展望テラスなどに流れるように誘導する作品は、本日の一押し作品。
135「無窮の地図」認知症の祖母の視点で住宅を再構築した意欲的な作品。認知症患者も診療している医師として、楽しませていただきました。(恐らくセミファイナル審査のため)置いてなかったけど、後日ポートフォリオを見てみたい。
178「余白の空気」余白系の作品も、自分の好み。
220「合縁建縁」水辺を扱った作品。ポートフォリオを見たかったけど(恐らくセミファイナル審査のため)なかった。後日みてみたい。
076「街の器」図書館等複合施設を中心とした街づくり。地域の様々な要素を螺旋状に巻き込んだゾーニング。現実化してほしい作品。
210「都市の結節点としてのVoid」京都三条に、結節点として機能する空間を作るダイナミックな作品。
496「物の家」毎年,形を変えて新しい作品が出てくる 記憶・想い出系の作品。
196「ある街への巣喰い」空き家・空き部屋の体系的なリノベーション。今後ますます重要になる課題。
123「海と街の距離 -津波被災地における復興拠点の提案-」岩手県大槌町赤浜地区における 嵩上工事や防潮堤に依存しない復興計画。今回もっとも心を動かされた作品。
2011年の3.11以降、個人的には、震災で沈下した土地を嵩上工事で元に戻すことは、何万年にも及ぶ地殻変動に逆らう行為で、短期的な自己満足でしかないと感じている(もちろん、住民や自治体が置かれた苦境は分かるので批判するつもりはない)。本作品のような コールテン鋼による躯体グリッドの上に設けた浸水想定エリア, 避難所エリア, 避難動線は、現実的な提案だと思う。
507「建具としての建築」境界という性質を持つ建具を 空間を変化させる手段として用いて、時間によって異なる空間を自由に作る楽しい作品。以前、引き戸で同様の表現をした作品がありましたね。
289「第一海堡の九相図」地形の死と向き合った作品。
駆け足の観戦で、ほとんど写真を撮っていない気がしていたけど、実際にはそれなりの枚数を撮っていた。でも、これら以外にも興味深い作品は多数あった。
=3月5日の感想(最終審査)===========================
13:30~15:00は宮城県美術館へ移動して「近代建築の美学 ~ル・コルビュジェと日本の建築家たち~」。3/5,12,19(日)の3回シリーズ。本日の太田教授(女子美術大学)の講演『ル・コルビュジェと日本』は為になった。その後すぐに帰宅して、SDL2017ファイナル(最終審査)をWeb配信で観戦。
今年は、ファイナリスト10名の中に、空想お花畑系や理解不能系のぶっ飛んだ学生が居なかったこともあってか、盛り上がりに欠ける感もあったが、審査終盤では審査員のヴォルテージも上がり、イイ感じで審査が終わった。
=3月9日の感想(作品展示)===========================
今日は、開場の10時から、気になった作品のポートフォリオを読みながら建築模型に溺れる。3/5とは逆に 5F→6Fの順で。セミファイナル審査や混雑のため 3/5(日)には見られなかったポートフォリオも、ゆっくり見ることができて良かったが、気が付いたら4時間も経っていて疲れた。
以下、気になった作品。
312「おくりがま」建物を「壊す」のではなく「おくりだす」プロセスの案。
334「COWTOPIA」この作品は、フ3/5(日)AMに観たとき、もしこれがファイナルに選出されればDiscussionが盛り上がるだろう、と思った。しかしそれと同時に、牛舎の臭いの問題 および 放牧地の狭さから、ファイナルに選出されることはないだろう、と思っていた。だが、ポートフォリオを見たら、換気システムについても言及してあった。もし実現したら、非常に面白い案。ファイナルで日本二に選出された作品。
157「奇貨可居の塔」建具の開閉率を変えることで、建物の振る舞いを変える。こんにゃく農家のための建築。
141「都市に脈打つ駅」線路で分断された街を活性化する案。個人的に興味がある課題であり 例年みられるが、本作品では、線路を地下化して、地上部を河川として開き(水路の再生)、ヒト・水を循環させる心地良い案。
137「建築が生まれる時」山口出身の学生が、作品舞台地元のヒトに直接 話を訊きながら完成させた作品。このプロセスを、ファイナルで観たかった。
189「自由を手に入れるための対価」新しい移動式住居の提案。
409「不均質な空間の豊かな暮らし」模型を見ただけでは分からないけど、ポートフォリオを読むと、居心地の良さそうな作品。
370「高齢者・子供・マラソンランナー」周囲から隔絶されていた 霞が関ビルの低層階を改築して町に開放する案。パブリックスペースや保育園を作り、ビル内にランニングコース(写真の黒い道)を通す。
241「緑の結目」神社機能を展開し、パブリックスペースを開放しながら、街を活性化。
302「境界をまたぐ」水辺環境を生かした こんな大学キャンパスがあったらイイよね。
292「まちなか暮らしからの学び」商店街から学生街へのコンバージョン。
今年も3/9(木)には、多くの作品(1/3くらい?)が早期搬出されていた。観られないのは残念なので、初日から「本作品は3/XX早期搬出予定です」のような張り紙があるとありがたいのだが...。そうであれば、初日には、それらの作品のポートフォリオを優先的に見たい。
梱包日本一これも毎年 楽しみにしている。
=3月11日の感想(作品展示)===========================
18時からの会議前に、SDL2017@smtに立ち寄る。
099「立つ鳥、跡を濁す」空きスペースをリノベーションして宿泊施設に転用する案。空家の活用、スクラップ&ビルドの代替案として興味深い。
今年は、東日本大震災関連の作品もあったけど、「産業が衰退した町」や「過疎化した温泉や観光地の再生」を題材にした作品が多かったように感じた。
SDL2018も楽しみにしています。
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以下は、過去のSDLの感想メモへのリンク。
SDL2014の感想 各年ごとに気に入った作品はあるけど、全体としては、ここ数年で一番楽しめたSDLだった。
SDL2012の感想 大震災翌年のSDL。作る側にも観る側にも、震災の体験が多少なりとも影響していた印象を受けた。